「麻」の古い呼び方に「唐苧(カラソ)」と言うのがあるのだとか。
選ばれなかった古い呼び名の素材が、私が知っているモノと同じだったのか、それとも異なるモノだったのかは解りませんが、この言葉が生きていた頃、どんな人たちがどんな風に使っていたのでしょうか。
「カラス」みたいで、ちょっと素敵な響きだなと思っています。それに「選ばれなかった」と言うところにも、なにか引っかかりを感じました。
時を超えてやってきてくれた言葉 CARASO 、大切に使わせていただきたいと思います。
古い力織機で、巾の狭いストライプの麻布を織っています。
一口にストライプと言っても、その組み合わせは膨大で、私が取り組めているのはその内のほんの一部なのですが、理屈では1000本の経糸の布ならば、1000種の素材、1000種の太さ、1000種の色を組み合わす事ができます。私は麻を使い、そのストライプに向き合って日々仕事を重ねています。
例えば、演歌歌手はコブシの回し方一つで愛を伝えたり、バイオリニストはヴィブラートだけで悲しみを表現したり、小説家は文字のない行間に意味や思いを込めたり、他にも様々な分野で「伝えきれないことを伝える試み」がなされているように、ストライプにも直接的では無い方法だからこそ、伝えられることがあるのでは無いかと感じています。
他にもたくさん。その殆どはきっと、側から見れば滑稽な妄想のようなものなのですが、私自身はストライプのお陰で、日常の些細な出来事や眼に映る景色、音楽、文学、アート、クラフトなど、世界中の様々なものと繋がれて幸せです。
残念ながら私には「美しい」と言うことが、感覚的には分かりませんが、世の中には実際に、音楽や文学のような人が生み出したものがきっかけとなり、一瞬にして世界の見え方が変わる。そんな体験をした人が沢山いて、そんなことの正体を知れたなら、どんなに素敵だろうかとよく考えます。
独りよがりでユーザー無視の技術的挑戦や過剰なこだわり、恐らくは理解を得られないような繊細過ぎるトライで、誰かの空腹は満たさないし、困っている人を救うこともありません。生活を便利にしないことも承知しています。けれど必要なものだけでは、世界は半分になってしまいますから。
許されるうちは、ユニクロもコムデギャルソンも同じテーブルに乗っていて、音楽も絵画も物語も境目がなく、アートやサイエンスやテクノロジーは何時も一つのモノで貫かれている。そんなシンプルな価値観で、諸々言い訳を重ねながら、小さく、狭く、深く、濃く、身勝手な麻布を作ります。不要なものが必要な世界に。
ストライプ エンジニア
山西 盛隆 / MORITAKA YAMANISHI
1973年 滋賀県出身 麻夜具の生産が盛んな街に産まれる。2001年 山西整経入社、同年 後におうみの名工となる近江上布 伝統工芸士(総合部門)大西實氏に師事し手織をはじめる。2009年 皆川魔鬼子氏(ISSEY MIYAKE)が審査委員長を務めるJFW JAPAN CREATION A/W TEXTILE CONTEST にて弧を描く経糸の織物「円」を発表しグランプリ受賞(経済産業大臣賞)。2016年 経済産業大臣指定伝統的工芸品 近江上布(製織部門)の伝統工芸士に認定。2017年 日本アカデミー賞受賞作家 小山薫堂氏率いる LEXUS NEW TAKUMI PROJECT にて滋賀の匠に選出される。2019年 東京ミッドタウン STYLE MEETS PEOPLE にて 展示会 ART MEETS PEOPLE vol.033- MORITAKA YAMANISHI 0.01 Emotional Textiles 開催。
その他、紬と織の公募展、現代手織物クラフト公募展、JAPAN CREATION TEXTILE CONTEST 入選、湖都百景芸術大賞展 大津商工会会頭賞、日本民藝館展 新作工藝公募展 準入選 など。
現在は整経を生業としながら伝統的工芸品 近江上布の製織にも従事、日々仕事を重ねている。取り組んでいる麻のストライプによるプロダクトは、実験的な要素が強い。
©Caraso